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犯罪者たちの人間性を追求し、微妙な心の動きを精密に描写

2008/01/07

(c)2008 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.
(c)2008 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.
●監督・脚本:アンドリュー・ドミニク 製作:ブラッド・ピット、デデ・ガードナー、リドリー・スコット、ジュールズ・ダリー、デイヴィッド・ヴァルデス 製作総指揮:ブラッド・グレイ、トニー・スコット、リサ・エルジー、ベンジャミン・ワイズブレン 原作:ロン・ハンセン 撮影:ロジャー・ディキンス 編集:ディラン・ティチェナー 衣装:パトリシア・ノリス 音楽:ニック・ケイヴ、ウォーレン・エリス
●出演:ブラッド・ピットケイシー・アフレック、サム・シェパード、メアリー・ルイーズ・パーカー、ジェレミー・レナー、ポール・シュナイダー、ズーイー・デシャネル、サム・ロックウェル
●2007年/アメリカ/160分/1月12日丸の内プラゼールほか全国にて日本公開
●配給:ワーナー・ブラザース映画

美化の要素を削ぎ落とした荒涼たる世界

 ジェシー・ジェームズといえば、ビリー・ザ・キッドやワイアット・アープなどと並んで長年くり返し登場する西部劇のヒーローだった。とくにジェームズ兄弟は強盗団を結成して暴れまわった無法者だけれども、じつはその行動には義賊的な面もあったのだとか、止むに止まれぬ復讐だったとか、なにかと理由をつけて美化されてきたものである。しかし、そんな美化の要素をいちいちたんねんに削ぎ落としてしまうと、あとに残るのはじつに寒む寒むとした悪党どもの心のなかの荒涼たる世界である。彼らが馬で走りまわった西部の風景さえ、あのなつかしく素朴な力に充ちたものではなく、もう心も凍るような冷たい眺めである。

西部劇というより犯罪劇

 ブラッド・ピットがジェシー・ジェームズを演じたこの映画は、開拓時代の西部を舞台にしていても、もうあのなつかしい西部劇ではない。そうではなくて、犯罪者たちの人間性を追求する犯罪劇と言うべきであろう。見ればスカッとする西部劇を期待すると面喰う。ここにはどうしようもなく殺し殺される不毛の世界に引きずり込まれてゆく男たちの内面が活写されている。それでかえって心を打たれるものがある。

現代のアメリカ人の虚無的なポーズ

 無法者のジェシー・ジェームズを恰好いいと思ってあこがれたロバート(ケーシー・アフレック)というチンピラが、ジェームズ兄弟の強盗団に入る。ひたすら憧れる彼が、自分こそいちばん彼から信頼されていると思い込んだところから、仲間の結束にヒビが入ってくる。そして仲間うちの疑心暗鬼のなかで裏切りの心理も生れてくる。そういう微妙な心の動きをアンドリュー・ドミニク監督はじつに精密に描いている。ブラッド・ピットのジェシー・ジェームズは、ヒーローでもなく、いい恰好をしたがる奴でもなく、ただもう空っぽの心を埋めるためのように犯罪をくり返しているだけのようだ。これは現実にいたジェシー・ジェームズよりもむしろ、目標を見失って途方にくれている現代のアメリカ人の虚無的なポーズを感じさせる。

身につまされる恰好悪い生き方

 この虚無的な男を殺して恰好悪いヒーローになってしまったロバートが、以後、裏切者という恥を背負って生きてゆくことになる。その恰好悪い生き方が、ただダメな奴だなあというのではなくて、なんとなく身につまされるような姿に見えてくる。そこがこの映画の独特のところである。どうしてこんなことになっちまったんだろう、でも敵に弱みだけは見せられないと凄んでいるみたい。ブラッド・ピットのそんな表情に深い影がやどる。

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