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少女の成長とイランの激動の歴史

2008/01/23

(c) 2007. 247 Films, France 3 Cinéma. All rights reserved.
(c) 2007. 247 Films, France 3 Cinéma. All rights reserved.
●監督:マルジャン・サトラピヴァンサン・パロノー 製作:マルク=アントワーヌ・ロベール、ザヴィエ・リゴ 原作:マルジャン・サトラピ 脚本:マルジャン・サトラピ、ヴァンサン・パロノー 音楽:オリヴィエ・ベルネ
●声の出演:キアラ・マストロヤンニカトリーヌ・ドヌーヴダニエル・ダリュー、サイモン・アブカリアン、ガブリエル・ロペス、フランソワ・ジェローム
●2007年/フランス/95分/B&W(一部カラー)/1.85/ドルビーSRD/12月22日(土)よりシネマライズほか全国にて順次日本公開
●配給:ロングライド

イランで生まれフランスで暮らす監督の自伝的作品

 ユニークなフランス映画。
 いや実質的にはイラン映画といっていいかもしれない。テヘランで育った一人の少女の成長とイランの激動の現代史を重ね合わせている。しかもアニメ。
 監督はマルジャン(マルジ)・サラトビというイランの女性。現在パリで活動している。フランス人のスタッフが協力。声の出演はフランスのキアラ・マストロヤンニ、カトリーヌ・ドヌーブ(この二人は親子)、それに往年の名女優ダニエル・ダリュウ。仏イ共作でもある。
 「ペルセポリス」とは「ペルシャの都市」という意味。一九六九年に昔のペルシャ、現在のイランに生まれた監督の自伝になっている。

明るい少女が笑わなくなる

 マルジという女の子が主人公。裕福な家に生まれ、優しい祖母、両親に可愛がられ、のびのびと育っている。ブルース・リーやロックが大好き。テレビで日本の「ゴジラ」も見る。
 しかし、一九七九年、マルジが九歳の時に起きた革命によって国王(シャー)にかわり宗教指導者のホメイニ師が政権を樹立してから、厳格な宗教的規律によって市民の自由が奪われてゆく。反対するものは容赦なく粛清される。
 パンクを愛するマルジには毎日が息苦しい。心配した両親は十四歳になった娘をウィーンへ留学させることにする。マルジは泣く泣く祖母と両親と別れウィーンへ旅立つ。
 西洋社会への留学。晴れやかになる筈だったが、異国での暮しはつらい。イラン人ということで差別される。恋には破れる。前は明るかった少女が、次第に笑わなくなる。不機嫌で怒りっぽくなる。ついにボロボロになって行き倒れ、追い詰められたマルジは故郷の家族のもとに帰る。

アニメならではの妙味

 アニメといっても日本のアニメのようにカラフルではない。モノクロ。日本の墨絵のような感じがある。監督によれば、アニメにしたのは、実写にすると「イラン映画」と特殊視されてしまう、アニメにすると普遍性が生まれるためだという。
 アニメにすることで反政府主義者たちの処刑の場面も過度に残酷にならずにすむ。恋をしている時は、恋人が二枚目に描かれるのに、失恋したあとは、同じ恋人がひどい顔に変わってしまうのもアニメならではの面白さ。

「イランから」と迷いない答えを探して

 テヘランに戻ったマルジは大学に通い、やがて結婚する。しかし、革命政権の厳しい政策は変らず、人々の生活は相変わらず息苦しい。結婚生活もわずかで終わってしまう。
 マルジはいつも自分の居場所がない。ウィーンでは外国人として差別され、テヘランに戻ってくると外国帰りと扱われる。
 マルジ自身、実は、心に負い目がある。裕福な家の娘だったから、自分だけが祖国を逃れ、平和なウィーンに留学できた。
 一九八〇年から八八年までイランはイラクと戦ったが、マルジは、この長い戦争も多くは体験しなかった。皆んなが苦しんでいるときに自分だけが楽をしていた。その負い目がマルジを追いつめてゆくのだが、自分に厳しくあろうとするからそうなるので、やがて彼女は負い目の中からこそゆっくりと新しい自分を発見してゆく。
 テヘランから今度はパリへ旅立つ。オルリー空港でタクシーに乗った彼女が運転手に「どこから来たのか」と聞かれ、迷うことなく「イランから」と答えるラストが胸を打つ。

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