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“祖国とは何か”とユニークに問いかける

2008/03/01

©2007 DreamWorks LLC and Kite Runner Holdings,LLC.All Rights Reserved.
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●製作:ウィリアム・ホーバーグ、ウォルター・F・パークス、レベッカ・イェルダム、E・ベネット・ウォルシュ 製作総指揮:シドニー・キメル、ローリー・マクドナルド、サム・メンデス、ジェフ・スコール 共同製作総指揮:ブルース・トール 監督:マーク・フォスター 脚色:デイヴィッド・ベニオフ 原作:カーレド・ホッセイニ(「君のためなら千回でも」)
●出演:ハリド・アブダラホマユーン・エルシャディ、ゼキリア・エブラヒミ、アフマド・ハーン・マフムードザダ、ショーン・トーブ、アリ・ダネシュ・バクティアリ、サイード・ダグマウイ
●2007年/アメリカ/129分/2008年2月9日より日本公開
●配給:角川映画、角川エンタテインメント

望郷の思いが生んだ物語

 アメリカ映画だが、内容はアフガニスタンを扱ったものである。原作者のカーレド・ホツセイニはアフガニスタン人で、少年時代に外交官だった父の任地のパリからアメリカに亡命した。母国にソビエト軍が進攻してきたからである。以後アメリカで育ってこの映画の原作で作家としてデビューした。だから正確にはアフガニスタン系アメリカ人であるが、それだけに少年時代を過した故郷の古き良き時代によせる思いは切々たるものがあり、その愛する故国の内戦につぐ内戦やタリバン政権下の本当の苦難の時代にそこから逃げて豊かなアメリカで過していたという、負い目の意識が母国への思いをいっそう熱っぽいものにしているようだ。

 原作はそんな長篇小説である。原題は「凧あげ」で、平和だった時代の首都カブールで毎年春がくると町じゅうで熱狂的にやった凧合戦の思い出がストーリー全体の土台になっている。ああ、かってあんなに平和な生活があったのに……と、語るも涙、見るも涙という、こんな切ない設定は、ただの取材だけでは出てこないだろう。難民ならではの望郷の思いが生んだもので、いま世界じゅうが難民であふれていることを思うと、世界はこんな幻影で満ち満ちているのだと思う。

 監督のマーク・フォスターはドイツ生れのスイス育ち。主演のハリド・アブダラはエジプト系イギリス人。主人公の父親役のホマユーン・エルシャディはイラン人でヨーロッパなどの生活が長い。——というふうに映画化に当った人々もさまざまな国にまたがったコスモポリタン的な人が多いようだ。そのせいか、典型的なハリウッド作品とはどこか違った肌合いを持っていて、いったい祖国ってなんだろう、という問いが全編に漂っている感じがするところがユニークである。

忘れてはいけない時代

 2000年にアメリカで幸せにくらしているアミールという男のところに故郷のアフガニスタンから、どうしても用があるから帰ってこい、という知人からの電話がかかってくる。そこで彼はタリバン政権による信じ難いほどの暴虐な支配下にある母国に入って行って、ひとりの少年を救い出すという冒険をやることになる。この冒険のくだりはいかにもハリウッド映画らしいものであるが、なぜ彼がその少年を助けなければならないかについてのいきさつを物語る長い回想シーンが、アフガニスタンがまだ平和だった時代の世相人心をかいま見せてくれるものがあって面白いし、とても貴重だと思う。
 
 山また山を越えてゆくこの国にも、かってブルジョア社会があったし、義理人情にかかわるメロドラマ的な人間関係があり、貧しい者の意地もある。この国は多部族国家で部族間に差別や対立があることが内戦を複雑にしていることは知っていたが、その差別感情の実態をドラマとして知ることも興味深い。
 
 中東の動乱の中心がイラクに移ってからはアフガニスタンは国際社会から忘れられがちであるが、忘れてはいけない、ということをこの映画は強く印象づける。作中人物たちを好きになることで。

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