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奇抜な魅力に重きを置き過ぎたが、
子ども層の共感は呼びそうなR・ウィザースプーン プロデュース作

デイヴィッド・ルーニー
2008/03/09

●製作:リース・ウィザースプーン、スコット・スタインドーフ、ジェニファー・シンプソン 製作総指揮:ロビン・グリーンスパン、ダニー・グリーンスパン、アンドリュー・モラスキー、クリスチャン・アーノルド=ボイテル、ディラン・ラッセル、マイケル・ロバン、クリス・カーリング 監督:マーク・パランスキー 脚本:レスリー・ケイヴニー
●出演:クリスティナ・リッチジェームズ・マカヴォイ、キャサリン・オハラ、ピーター・ディンクレイジ、リチャード・E・グラント、サイモン・ウッズ、ロニ・アンコーナ、レニー・ヘンリー、リース・ウィザースプーン
●2007年/イギリス/101分/2008年3月1日(土)より日本公開
●配給:東京テアトル、デスペラード

10歳前後の女の子の共感を呼ぶ、
ありのままの自分を受け入れるというメッセージ

 『ペネロピ』のオープニング、タイトルが現れるまでのめまぐるしさの中で、監督マーク・パランスキーは、しっかりとした物語の掴みと奇抜なビジュアルスタイルを確立し、古めかしい世界と新しい世界を融合する創造性豊かなキャンバスを作り出すことには成功している。そこで、本作が長編監督デビュー作となる彼は、タイトルにもなっている名前を持つ主人公の生い立ちを急ぎ足で紹介する。貴族出身で社交界でも有名な名家の娘であるペネロピは、一家の祖先に対しかけられた呪いのため、豚の鼻をもって生まれてしまった。そんな不思議な醜いあひるの子的物語なのだが、風変わりな魅力をひねり出そうと一生懸命になりすぎてしまい、話が進むにつれバランスを崩してしまっている。ただ、この物語が持つ、ありのままの自分を受け入れるというメッセージは、かわいらしくないまま思春期を迎えることに恐れをなしているような10歳前後の女の子たちには、共感してもらえるのかもしれない。

色鮮やかなで無国籍なおとぎ話を
21世紀風に上手にブレンド

 本人が運営する製作会社タイプAを通して、リース・ウィザースプーン(物語の後半に、ちょっとした役で出演もしている)によってプロデュースされた本作は、実際のロンドンを架空の世界であるかのように見せかけ、アメリカやイギリス、果ては英米混合の言語なまりをごちゃ混ぜにして、どの国の話だか分からないように物語を扱っている。

 色鮮やかなカラーパレットを与えられ、プロダクションデザインのアマンダ・マッカーサーと精力的な撮影監督ミシェル・アマテューの手によって、ロンドンの古くからの名所や品位のある街路は、おしゃれで現代的な景観と組み合わされ、壮観さと、すすけた、おとぎ話にあるような風変わりさを21世紀風のスタイルで、うまく溶け込ませている。

評価されるべき衣装や音楽、
だが作品づくりは新鮮味に欠けるか
 

 キャラクターの性格をうまく伝えているジル・テイラーの衣装や、ジョビィ・タルボットの快い音楽も、作品の魅力に一役買っている。物語を語っていく上での確信が揺らいでいるとしても、制作サイドは、その野心的な姿勢で確実に評価されることになるであろう。

 ティム・バートンさながらの奇怪さを散りばめるプロダクション・デザイナー、マッカーサーに共鳴するように、監督パランスキーと脚本家のレスリー・ケイブニーは、『シュレック』『プリンセス・ブライド・ストーリー』、『エラ・エンチャンテッド(日本未公開)』などの作品を生み出した現代版おとぎ話の源泉に手をつっこみながら、『ビートルジュース』『シザーハンズ』『ビッグ・フィッシュ』といった作品から全てを借りてきているような作品作りに始終してしまっている。結果は、かわいらしいものとなっているが、魅惑的というには何かが足りない。

物語の最初の躓きは
さほど“醜くない”ペネロピ

 傲慢な母(キャサリン・オハラ)と、ただ混乱しているだけの父(リチャード・E・グラント)によって、詮索好きなタブロイド紙の世界から身を隠されているペネロピ・ウィルハーン(クリスティナ・リッチ)は、自分の同じ境遇にいる仲間と結婚することができれば呪いが解けると信じている——これは、階級差別への言及と解釈できる。階級的にふさわしい求婚者たちが集められ長蛇の列を作るのだが、彼女の豚鼻を見たとたん、皆あたふたと逃げ出してしまう。ここが問題なのだが、リッチ演じるペネロピは、彼らが恐れて部屋から逃げ出してしまうほどひどく醜くはなく(男たちは邸宅二階の窓から身を投げたりする)、これがまず脚本の最初の躓きになってしまっている。

ジェームズ・マカヴォイの登場で
物語は思わぬ方向へ

 慌ただしく部屋を後にした男たちの中に、財閥の御曹司エドワード・ヴァンダーマン(サイモン・ウッズ)もいた。「ミス豚鼻」と遭遇したと言い張る彼は、世間から、ついに頭がおかしくなったと思われてしまう。

 物語の主軸となる衝突、ここがあまりうまく展開できていないのだが、その対立はペネロピを衆人の目の前に引きずり出すことによって、自分の頭がおかしくなっていないことを証明しようとするエドワードの試みを中心に展開する。彼は、別のことで個人的にウィルハーン家に恨みを持つリポーター、レモン(ピーター・ディンクレイジ)と手を組む。

 二人は、ギャンブルの借金に困っている(二人が勝手に、そう信じているのだが)金持ちの放蕩息子マックス(ジェームス・マカヴォイ)をたきつけ、ペネロピに求婚させようとする。しかし予定していなかったことに、マックスはペネロピを気に入ってしまい、このことで二人の計画は込み入ったものに。そのことでペネロピが親離れをしようとしたものだから、計画はますますこんがらがってしまう。

光るリッチとマカヴォイの演技
ウィザースプーンの役は蛇足

 光と影、正直さとずるさを何かを払拭するように交互に見せるリッチの演技は純粋さで、その傷つきやすい鋭さを和らげ、彼女でなければ出せなかった地に足の着いたところを、本来非現実的であった脚本に与えている。彼女が不恰好な鼻を隠すようにスカーフを巻き、ベールをかぶった女性よろしく、威圧的な街に足を踏み入れ、自由を勝ち取るシーンでの演技が特に良い(イスラム世界が西洋世界に遭遇するということか? まあ、それは違うだろう)。

 マカヴォイもまた、ロマンスの部分が物語をギクシャクさせているにもかかわらず、人好きのする、どことなくだらしない魅力を振りまきながら、よい演技を見せている。

 演技のスタイルとしては、あまりに一貫性がないが、オハラの調子っぱずれのタイミングでコメディの色合いが加えられ、常に独特な雰囲気を醸し出すディンクレイジも、それに一枚噛んでいい味を出している。ウィザースプーンは、自由を勝ち取ったばかりのペネロピと意気投合する、べスパを乗り回す自由人という役柄で登場している。女優としては魅力的な存在なのだが、彼女の演じた役は、はっきり言って蛇足。

 インディ系の素材というよりは、スタジオの出し物に近い本作であるから、これ以上の露出の前に、緩慢なところのある物語の中ほどの部分をもう少し絞ったほうが良いかもしれない。

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