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好きなことに一途に打ち込む少女たちを描いた佳作

2008/04/01

(c)2008『うた魂♪』製作委員会
(c)2008『うた魂♪』製作委員会
●監督:田中誠 エグゼクティブプロデューサー:馬場清 プロデューサー:有重陽一、野間清恵、川上竜生 脚本:栗原裕光、田中誠 撮影監督:鈴木一博 美術:新田隆之 録音:岩倉雅之 編集:大永昌弘 音楽:林祐介
●出演:夏帆、ゴリ(ガレッジセール)、利重剛、中村久美、ともさかりえ、間寛平
●2007年/アメリカンヴィスタ/ドルビーSRD・DTSステレオ/カラー/120分/4月5日(土)より日本公開
●配給:日活株式会社

函館イルミナシオン映画祭第八回シナリオ大賞受賞作

 『スウィング・ガールズ』(04年)『リンダ・リンダ・リンダ』(05年)『フラガール』(06年)と近年、女の子が好きなことに一途に打ち込む姿を描く映画が多くなっているが、この映画も合唱が好きな女子高校生を主人公にしている。

 主演は『天然コケッコー』(07年)が可愛かった夏帆。あの時は中学生だったが今回は高校生。一年で背もずっと高くなり、顔も大人っぽくなっているのに驚く。少女の成長は速い。

 監督は『タナカヒロシのすべて』(04年)でデビューした田中誠(一九六〇年生まれ)。函館イルミナシオン映画祭第八回シナリオ大賞を受賞した栗原裕光(一九七六年生まれ)のオリジナル脚本。たまたまこの時、私は選考委員をつとめたが、とても面白く読んだ。

夏帆が演じる“可愛い困ったちゃん”

 高校の合唱部というどちらかというと地味で優等生的な部を取り上げていることがまず面白かった。女子だけの合唱部に男子だけのバンカラ風合唱部がからむというミスマッチも意表を突いた。

 北海道のある町。といっても高校の名前がそれぞれ七浜、湯の川とあるので函館を思わせる。季節は夏。空は青く高く、海に近いので明るさがある。

 道立の七浜高校に通う夏帆は合唱部のソプラノ・リーダー。美人だし、すらりと背が高い。容姿にも声にも自信を持っている。歌っている時は、合唱なのに主役は私よと、うっとりと自己陶酔してしまう。あとで分ることだが、小学生の時にはそのために、歌の下手な女の子を無意識で傷つけてしまったこともある。決してわがままではないのだが、自分の世界に浸りきってしまう困ったところがある。いかにも性格のよさを感じさせる夏帆がこの“可愛い困ったちゃん”を素直に演じている。

「歌はハートだ」

 ある時、同級生の好きな男の子(石黒英雄)に歌っているところを写真に撮りたいと申し込まれ、大喜び。ところが出来上がった写真を見ると、口を大きく開けたヘンな顔ばかり。歌っている時の私ってこんなヘンな顔だったのかとがっかり。自己陶酔が一気に壊され、歌うことに身が入らなくなる。

 ここで愉快なやつが登場。ライバルの湯の川学院の番長。ガクラン着た一見、怖そうな顔をしている。ぞろぞろ仲間を引きつれている。「オス!」の世界。

 ところが驚いたことにこの番長、合唱部のリーダーだと分かる。落ち込んでいる夏帆と知り合い、「歌はハートだ」と恥しくなるようなセリフを堂々と口にし、実際、尾崎豊の「15の夜」を気持いっぱいに熱っぽく歌い上げ、聴衆の拍手を浴びる。

 一見、暴走族風の合唱部の迫力にお嬢さんの夏帆はすっかり圧倒され、「歌はハートだ」の決めゼリフを素直に受入れてしまう。

ガレッジセールのゴリが高校生を演じる
ミスマッチの面白さ

 この愉快な番長を演じているのはお笑いコンビ、ガレッジセールのゴリ(といっても私は知らなかったが)。顔はおっさん風で、どう見ても高校生には見えないが、そのミスマッチも漫画的で笑わせる。

 最後の合唱コンクールで、この両校だけでなく出場した全校の合唱部員が自然と一体となってアンコール曲「あなたに」を歌い上げるところは感動する。

 天然ボケのような先生、薬師丸ひろこが実は番長のかつての芸術の神(ミューズ)だったなど意外性も効いている。

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