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親密な信頼感が大きな強味となったドキュメンタリー

2008/03/21

製作・著作:広河隆一パレスチナ記録映画制作委員会(広河隆一事務所、『1コマ』サポーターズ)
製作・著作:広河隆一パレスチナ記録映画制作委員会(広河隆一事務所、『1コマ』サポーターズ)
●監督:広河隆一 製作:森沢典子 プロデューサー:安岡卓治 撮影:広河隆一 写真:広河隆一 編集:安岡卓治辻井潔 音楽:飯利友季子 
●2008年/日本/スタンダード/131分/3月22日(土)よりユーロスペースにてロードショーほか全国順次公開
●配給:バイオタイド

大惨事を意味するNAKBA

 NAKBAとは大惨事の意味だという。1948年にユダヤ人の国として建国されたばかりのイスラエルでは、もともとそこにあった400以上のアラブ人の村を襲撃して住民を追い出してしまった。以後、今日でも難民となっているアラブ人たちにはこの事件をNAKBAと呼んでいる。イスラエル建国を描いた1960年のアメリカ映画『栄光への脱出』では、これからこの国はユダヤ人とアラブ人が協力して理想の世界を築きあげてゆくことになるのだ、と高らかに宣言していたものだったが、現実はそれとははるかに遠いものになった。そしてその発端にはこの大惨事があったのだ。

取材する側とされる側の間の、親密な信頼感

 この映画を作った広河隆一はベテランのフォトジャーナリストで、かずかずの戦場を撮った作品などで知られている。1967年、23歳のときにはイスラエルのキブツで暮したことがあり、そのキブツのすぐ脇にあった廃墟がじつはNAKBAのときに破壊されたアラブ人の村の跡のひとつだと知った。以後彼はアラブ人のおかれた状況を取材し、1982年には難民キャンプでの大虐殺を撮影して世界的なスクープとした。

 こんどのこの映画は、それら若き日に取材した映像も含めて、長年撮ってきたイスラエルとパレスチナの映像素材を集大成し、あらためてNAKBAで失われた村を訪ねる旅というかたちでまとめたドキュメンタリーである。難民となって抵抗を続けるアラブ人の側に取材した部分も悲痛だが、それに劣らず貴重なのは、アラブ人に対して弾圧的であり過ぎるイスラエルの政策を自己批判するユダヤ人も少なくないことである。それも平和主義的な学者などの知識人たちだけでなく、たとえばたまたま乗ったタクシーの運転手さんが、タカ派勢力の過激な行動に嫌悪の気持をかくさないあたり、そういうユダヤ人もいるのだという事実をよく示している。取材する側とされる側の間に親密な信頼感の感じられるものが多いことがドキュメンタリーとしての大きな強味になっている。飯利友季子の音楽も印象的だ。

中東平和を望む者には見逃せない映画

 外から見るとこの国は終始一貫アラブ諸国に対して強圧的、好戦的にふるまっているように感じられるが、実際には平和主義的な勢力も立派に存在し、映画などでは意外なほどイスラエル政府の動きに批判的な作品が少なくない。ただそれが多数派となるのは容易でないので、結果的にはつねにタカ派の国と見えるのだ。しかし中東の平和を望む者としてはこの国のハト派を尊重して見守るしかない。その意味でこの映画は、この国のハト派の人々の体温にジカに接するようなインタビューがいくつもあって、世界の人心の動きのとくに重要な部分に触れているという感銘がある。アメリカとアラブの和解を切に希望する者としては見逃せない映画である。

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