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SKIPシティ国際Dシネマ映画祭 作品紹介

2008/07/14

Dシネマ(デジタルシネマ)にフォーカスした映画祭に参加しよう!

 今年5周年を迎えるSKIPシティ国際Dシネマ映画祭2008。同映画祭は、デジタルツールの進化によって広がりを見せる、Dシネマ(デジタルシネマ)にフォーカスし、才能の発掘と新しい映像産業の発展を目的に2004年にスタートした。メイン部門は、長編と短編2部門からなる「コンペティション」。長編部門は初年度より広く海外から、短編部門は日本のクリエイター支援のために国内作品に限定して第2回より公募している。
 デジタルで撮影・制作された作品を、4Kデジタルシネマプロジェクターというハイスペックなデジタル環境で上映するこの映画祭で、新しい才能を発見し、かつデジタルの可能性を探ってみよう! まずは長編部門にエントリーされた12作品を、以下の批評を参考に鑑賞するところから。なお映画祭の情報は毎日ニュースでお届けします。

『キャプテン・アブ・ラエド』 Captain Abu Raed

2007年/ヨルダン・アメリカ/95分/監督:アミン・マルタカ
上映日時:7月20日(日)11:30/7月23日(水)14:30


 男やもめのアブ・ラエドは、アンマン国際空港で働く、孤独な清掃員。ある日、ゴミ箱から見つけた、パイロットの帽子をかぶって帰宅した彼は、帰り道にひとりの少年と出会う。アブ・ラエドをパイロットだと信じ込んだ少年は、翌日から大勢の友だちを連れて、アブ・ラエドに世界中の冒険話をせがむ。最初は拒絶していたアブ・ラエドだが、狭い世界で貧しい生活を強いられている彼らの無邪気な希望に応えようと、架空の旅の話をすることに。子どもたちが喜ぶネタを仕入れるために、女性パイロットや旅行者たちとも積極的に交流を持ち、生活がにぎやかになったアブ・ラエドは、子どもたちの中に父親から虐待されている少年がいることに気づく。やがて“キャプテン”アブ・ラエドは、真の英雄になるのだ!
 ヨルダンで23日間かけて撮影されたという、貴重な本作。憂いや無邪気さなど、感情を豊かに表現する子どもたちの黒い瞳が印象的。(Kana Ishimura)

『戦禍の下で』Under the Bombs

2007年/レバノン/98分/監督:フィリップ・アラクティンジ
上映日時:7月20日(日)14:00/7月22日(火)19:10

 レバノンでイスラエルの空爆に遭い、行方が分からなくなった息子を捜し求める母。今なお、現実世界で繰り返されている悲劇を、ドラマとして余すところなく伝える佳作だ。
 爆音とともに崩れ落ちる家屋、そして逃げ惑う人々……冒頭の鮮烈な描写から、決してフィクションではないという“重み”がひしひしと伝わってくる。息子のカリムを預けた妹の住む街が、イスラエルの空爆を受ける。母親のゼイナは、いてもたってもいられず現地へと向かうが、タクシーの運転手は危険地域を目指す客を拒む。唯一、高額の報酬を条件に引き受けたのがトニーだった。だが、情報は錯そうし、道行く先は見渡す限りのがれきの山。家族と離れ離れになった人々を目にするたびに、ゼイナの不安は募る。そのあまりに必死な姿に、金目当てだったトニーも心の底からカリムを見つけたいという思いに駆られていく。
 愛する息子に会うため、危険も顧みずに突き進むゼイナ。慈愛に満ちた表情のナダ・アブ・ファラットの熱演が、より悲しみを誘う。なぜ、罪もない母子が引き裂かれなければならないのか、庶民の視点から戦争のむなしさをまざまざと見せ付けられ、胸が痛んだ。(Gen Suzuki)

『エゴイスト』Egoist‐‐Lotti Latrous

2007年/ドイツ・スイス/92分/監督:ステファン・アンスピシュラー
上映日時:7月20日(日)14:30/7月22日(火)17:30

 内戦で荒廃したコートジボワールのある町で、たったひとりで療養所を切り盛りし、市民を病と日々の悩みから救おうとするスイス人女性医師ロッティ・ラトロウのドキュメンタリー。
 かの地の民族楽器ジャンベのリズムが静かに刻まれる中、ロッティの「自分はエゴイストなのだ」という告白が始まる。一切の虚飾を捨て、人々につくす彼女のどこがエゴイストなのか? 彼女の唯一の罪は、仕事のために家族とともに生きる生活を放棄したこと。その息子、娘たち、夫のコメントが幾度となく差し挟まれる。彼らは言う。「彼女は、彼女のすべき仕事なしで生きられないという意味においてエゴイスト」であると。ビート・リヒナー(カンボジアで小児病院を開く医師)、ロジャー・フェデラー(テニス・プレイヤー)に続き、2005年スイス・オブ・ジ・イヤーを獲得し、社会的評価の高いロッティ。果たして彼女が父親であったなら、ここまでの責めを負う必要があったのか。知るべき事実。観るべき一作。(Yuko Sekiguchi)

『赤い蟻』Red Ants

2007年/ルクセンブルグ・ベルギー・フランス/90分/監督:ステファン・カーピオー
上映日時:7月20日(日)17:00/7月25日(金)12:00

 ある孤立した村で、ガソリンスタンドを営む父親とふたりで暮らす、16歳の少女アレックス。母親が悲惨な死を遂げてから、父は、仕事にも身が入らず、心を閉ざしてしまっていた。そんな閉塞感いっぱいの生活の中で、ただただ生きていくために、彼女は同級生や村の若い男、近所の食料店の親父……と請われれば誰にでも奔放に若い性を売り、万引きもいとわず、気丈に生計を立てていた。とはいえ、妻と娘を混同してしまうような、朦朧とした父との関係が悪化してゆく中で、全てのことに絶望していたアレックスは、自分と同じように重たい過去を背負う、22歳の青年エクトールと出会う……。
 本作が長編デビューとなったステファン・カーピオー監督作。アレックスの乾いたロック、エクトールのピアノ(あるいはオペラ)、アレックスの父親の、母との思い出のカントリー・ミュージック。登場人物たちの心象風景を生々しく表現する、音楽のセンスが見事。(Kana Ishimura)

『Waiting for the Sun~天気待ち~』Waiting for the Sun

2008年/日本/100分/監督:奈良橋陽子
上映日時:7月21日(月)11:00/7月25日(金)18:30

 映画作りに全霊を傾ける若きプロデューサーたちが、幾多の困難を乗り越え、傑作を世に送り出すまでを描くバックステージものの成長譚。
 ロサンゼルスで映画製作を学んだ二人が、日本映画のスタッフとして報われない日々を過ごしたのち、リスペクトする日本人の巨匠がメガホンを取る日米合作映画をプロデュースする。
 その過程でもたらされる無理難題が芸能事務所社長のごう慢によるものだったりと、かなりダイナミックさにかける設定であるものの、実際もこんなことなのかもしれないと思わせる説得力もある。
 合作映画やハリウッド映画のキャスティングも手がける奈良橋陽子監督ならではの、リアルで興味深いバックステージもの。
 エンド・クレジット後にアメリカの映画人たちが語る合作の可能性についてのコメントは見逃したくない。(Yuko Sekiguchi)

『幸せのアレンジ』Arranged

2007年/アメリカ/89分/監督:ステファン・シャエファー、ダイアン・クレスポ
上映日時:7月21日(月)14:00/7月23日(水)12:00

 伝統的なユダヤ人家庭とイスラムの家庭に育った娘同士が出会い、各々の立場でアイデンティティを確立していく様子を、ニューヨークのブルックリンを舞台に紡いだクロス・カルチャー・ドラマ。
 ストイックな宗教的慣習から、彼女たちを解放してあげたいとお節介を焼く女性校長。そんな彼女に戸惑いつつ、民族の伝統と現代に生きる自身との接点を模索する二人。そんな彼女たちの成長を、ショットの対比と積み重ねで描く監督たちの手腕は見事。撮影のダン・ハーシーも、HDの機動性を活かしながら、奥行きのある画に仕上げている。ただヒロイン同様、やや生真面目な作りは観客を選んでしまうかもしれない。(Yuko Sekiguchi)

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